要件定義の場で、いつも突き当たる問い
私は普段Microsoft 365やSharePointなどのシステム構築を支援しています。お客様との打ち合わせでは、必ず「何を管理したいですか」「どんな情報を見たいですか」という話になります。
そこで一歩踏み込んで、「最終的なゴール(KGI)は何ですか」「そのために日々追うべき数字(KPI)は何ですか」とお聞きすると、明確に答えられる企業は意外と少ないのです。でもこれは恥ずかしいことではありません。日々の業務に追われる中小企業では、指標を整理する時間そのものが取れないのが実情だからです。
KGIとKPI
- KGI(重要目標達成指標):会社が最終的に目指すゴール。「年間売上3億円」「利益率10%」など。
- KPI(重要業績評価指標):ゴールに向かう途中経過を測る数字。「月間の新規商談数」「見積提出件数」「リピート率」など。
山登りに例えるなら、KGIは「山頂」、KPIは「今何合目にいるか」を示す道しるべです。
設定はできても、運用が続かない
要件定義の中でKGI・KPIを一緒に整理し、その場では「これで見える化できますね」と納得いただけることも多くあります。ところが数か月後に伺うと、こんな状態になっているケースが少なくありません。
数字を入力する人がいなくなった。会議の前日だけ慌てて更新される。結局、誰もダッシュボードを見ていないなどなど・・・。KGI・KPIは、設定することより運用し続けることのほうがはるかに難しいのです。
なぜExcel管理だけでは限界があるのか
多くの会社ではKPIをExcelで管理しています。手軽で悪くないですが、続かない理由もここにあります。つまり数字を集めるのが手作業だから面倒。集計しても「で、結局何?」を考える時間がない。誰かが解釈して次の一手を提案しなければ、数字はただの表のまま放置されてしまいます。
KPI運用の本質は、数字を眺めることではなくPDCAを回し続けることです。ここが最も労力のかかる部分であり、そして最も途切れやすい部分でもあります。
生成AIは「作る道具」ではなく「続けるパートナー」
最近感じているのが、生成AIの本当の価値はKGI・KPIを「作る」場面ではなく「運用を続ける」場面にある、ということです。
たとえば、こんな支援が可能です。
- 集計だけでなく分析まで:「今月の商談数が先月より2割減っています。要因として、展示会後のフォロー件数の減少が考えられます」と、数字の背景まで言葉にしてくれる。
- Teamsへの自動投稿:毎週月曜の朝、SharePointに蓄積されたデータをAIが分析し、「先週のポイントと今週の注目点」をTeamsに投稿する。誰も見に行かなくても、数字のほうから会話の場にやってくる仕組みです。
- Power BIとの組み合わせ:ダッシュボードで傾向を可視化し、AIがその「読み方」と「打ち手の仮説」を添える。グラフを見て考える負担が大きく減ります。
- 異常検知と改善提案:普段と違う動きをAIが察知し、「この数字、いつもと違います。原因を確認しませんか」と声をかけてくれる。
最近はAIを経営判断の「壁打ち相手」として使う場面が増えてきたと思います。「この数字の落ち込みはどう解釈できるか」と問いかけるだけで、自分一人では気付かなかった視点が返ってきます。深夜でも早朝でも付き合ってくれる相談相手は、経営者にとって貴重な存在です。
少し先の未来 ― AIエージェントが伴走する経営
近い将来、AIエージェントが日々データを見守り、変化に気付き、必要なときに経営者へ報告と提案を届ける――そんな「継続的に経営に伴走するAI」が当たり前になる世界が見えてきています。
KPI運用の最大の敵だった「続かない」という壁を、AIが静かに支えてくれる時代です。
念のためお伝えすると、AIが経営を代わることはありません。最終的に判断し責任を持つのは、いつだって経営者ご自身です。
しかし数字を集め、読み解き、仮説を投げかけてくれるパートナーがいれば、その判断の質は確実に上がります。AIは経営者がより良い判断をするための頼れる相棒になります。
その第一歩として「自社のKGIは何か。そのために日々追うべきKPIは何か。」を考えてみて頂ければと思います。
この問いに向き合う時間こそが、AI活用よりも先にある、経営を良くする出発点だと考えます。

中小企業の「情シス不在」を支える外付けIT部|Microsoft 365・業務改善・情報セキュリティ・生成AI活用|株式会社テクノスイッチ 代表取締役|ITコーディネータ
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